港の見える丘で二葉亭四迷とめぐりあひ
横浜の関内、元町方面に続けて行く機会がありました。あまりなじみのない方面ですが、そのうちの1日、二葉亭四迷展に興味があって神奈川近代文学館を訪ねました。
二葉亭四迷は、日本における言文一致による近代文学の先駆者であり、ロシア文学の最初の紹介者です。1864年(元治元年)生まれということを考えると、時代をかなり先取りした精神の持ち主だったのでしょう。そしてそれは、文学者として高名でありながらそれを拒否して、実業やジャーナリズムの世界での成功を目指し、挫折していくという人生を招きます。二葉亭の精神の葛藤は、いまを生きる人にもあてはまる課題をはらんでいるように思います。代表的な作品には「浮雲」「平凡」、翻訳として「あひゞき」「めぐりあひ」など。
みなとみらい線の横浜中華街駅から港の見える丘公園を目指して歩きますが、上り坂ばかりでなかなか疲れます。
冷たい雨の降る日だったので、ほとんど人の姿もありませんでした。初めて訪問しましたが、ロケーションは素晴らしいですね。
例によって展示室の撮影は不可なので写真はありませんが、二葉亭の自筆原稿や日記のようなメモ、葉書などは興味深いものばかりでした。
パンフレットにありますが、文学を放棄し北京に渡った時期、新聞特派員としてのペテルブルク時代の日記、書簡類のなかに見る「失敗続きの生涯」「徹底した自己省察」に、現代にも通じるある種の人間の強さと弱さを感じます。一言で言えば「知識人の弱さ」ということなのかもしれませんが、それだけでは済まされない課題があるように思えました。
自筆原稿を見ながら、「浮雲」や「其面影」を読み直したくなりましたが、果たしていまの私に読みこなせるかどうか。。。 とりあえず書棚の奥から本を出してきましたが、若いころと違い、老眼というハンデもありますしねぇ。。。
展示をひととおり見てから、駅に戻りました。
道の途中で横浜港が見えました。雨に煙る眺めもなかなか良いものでした。
1908年、二葉亭四迷は海を渡り単身、ロシアに向かいましたが、生きて再び日本の地を踏むことができないということを想像していたのだろうかと、ふと思いました。ちょっと感傷的になったようです。
*「中村光夫文庫から 没後100年 二葉亭四迷展」は神奈川近代文学館で4月18日まで開催されています。
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