織田作之助の競馬
古本屋さんの文庫棚のぞいていたら、目の端に競馬という文字が目に入りました。もう一度目を戻すと古い角川文庫がありました。リアルな競馬は不調ですが、フィクションには魅かれます。
織田作之助の「世相・競馬」という文庫本です。馬券の最低単位と同じ100円で購入しました。織田作之助といえば夫婦善哉ですが、こんな反社会的(?)な作品も書いていたんですね。
京都が舞台で酒場の女給を妻にした真面目な高校教師が、妻の死とともに嫉妬心のなかで落ちぶれ競馬に入れ込んでいく物語です。1946(昭和21)年に発表された作品ですが、舞台はもちろん太平洋戦争よりも前のようです。
読み進むと、いまよりもいかがわしかった競馬場の雰囲気がよくわかります。馬券の種類は単複のみのようです。
別れた妻の名前が一代だったので、1番の馬ばかりを買う主人公。京都の淀から小倉競馬場へと物語は展開していきますが、当時の馬名やレース名、窓口の様子がよく伝わってきます。いかにも博打場という感じの描写が続きますが、実際、いまとはまったく違う雰囲気だったのでしょう。
最後の場面で主人公の買ったハマザクラ号が大穴をあけますが、万歳と絶叫しながら涙を流すという描写は、いまでも大井でも府中でも見られそうで、人間の姿はちっとも変わらないなと思います。
奥付に織田という著者検印があるのもいいですね。
調べてみたら、この作品は青空文庫でも読むことができます。
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