大倉集古館でアジアの憧憬を見る
お盆休みを利用して、普段行けそうで行かない美術館を見てみようということで大倉集古館を猛暑の中、訪問しました。虎ノ門駅からの道のりは大変な坂道で、途中でめまいがしてきました。
こちらでは9月30日までの日程で大倉コレクション アジアへの憧憬 という展示を行っています。明治の財閥・政商で帝国ホテル、ホテルオークラ、大成建設など多くの企業・学校などと関係が深い大倉喜八郎が集めたアジア諸国の仏教美術、中国の絵画、陶磁・漆工などの工芸品、陶俑や銅鏡などが公開されています。なかなかの見ものであるだけでなく、大倉集古館の建物や周囲も一見の価値があります。
館内は撮影ができないので、周囲だけでもご紹介します。
ホテルオオクラの本館前にある大倉集古館の展示館です。中国的というか汎アジア的というか、設計者の伊東忠太が築地本願寺、湯島聖堂なども設計していると知ると納得できます。少なくとも伝統的な日本建築とも近代建築とも異質のものを感じます。
2階のテラスから見るとホテルの建物の真正面に建っていることがわかります。
庭園にも数多くの像や梵鐘などが置かれていますが、やはりいちばん目立つのは創立者である大倉喜八郎のブロンズ像でしょう。
寝ているわけではありませんが、寝釈迦像を一瞬、思い浮かべてしまいました。髪が七三分けで、かなりリアルなデザインです。
前庭にはこんな感じで仏像などが並んでいます。左手前は普賢菩薩騎象像、そのとなりは薬師如来坐像でいずれも中国・明時代のものです。
大倉集古館のチケットで近くの泉屋博古館分館で開催中の花鳥礼讃 日本・中国のかたちと心も観覧できるので、初めて訪問。伊東若冲、椿椿山など日本・中国の花鳥画30点余りが紹介されていました。とくに若冲の海棠目白図はすばらしい作品なのはもちろんですが、「目白押し」という言葉が、鳥のメジロがぎゅうぎゅう詰めになって枝に並んで止まっている姿が由来と初めて気がつきました。いくつになっても、知らないことがあります...
泉屋博古館は旧住友財閥の所有していた中国・日本の書画・青銅器など保存・展示している施設で本館は京都にあります。
大倉集古館といい、こちらといい明治・大正の財閥当主の文化的素養に感心するとともに、日本の資本主義発達期における財閥の資金力というか富の蓄積には驚かされます。一般市民との経済・文化格差はとてつもないものだったのでしょう。第2次大戦後の日本では一般にこうした格差が縮小されてきたと言われていますが、ここ数年ふたたび広がっているように感じます。
両館が港区六本木、虎ノ門あたりにあるというのも過去の資産の継承ですが、都心とは思えない良い環境に建つ周辺のマンションなどを見ると、現代の新たな格差が実感されます。都市への経済・文化の集中や不動産価格の上昇、消費税率の引き上げなどが進むことによりあらゆる格差が固定化されていくように感じられますが、こうした感覚の広がりは社会不安や不信を内包しているように思われます。
あまりの暑さのせいか、思考があらぬ方向に進んでしまいました。
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